知っておきたい相続7(遺産分割協議)
相続の場面でよく耳にするこの「遺産分割協議」。
「遺産分割協議書」という書類の方が聞き慣れているかもしれません。
そもそも、「遺産分割協議」は、相続人が誰なのかを確定し、相続財産を相続人全員でどう分配するかを決めるためのものです。
この場合、当然「遺産分割協議」の前に相続人が誰なのかをすべて確定し、相続財産の全体像が明らかになっていなければなりません。
今回は「遺産相続手続き」の中でもかなり面倒な「遺産分割協議」についてご説明いたします。
このページの目次
遺産分割協議の目的
遺産分割協議の目的は以下の通りです。
- 相続人全員の合意内容を明確にする
- 協議の内容を書面に残し、後日の紛争を避ける
- 財産(預貯金・株式・不動産等)の名義変更に際し、法務局や金融機関等に提出する
- 相続税の申告書に添付する
遺産分割協議の必要性
「遺産分割協議」および「遺産分割協議書」は絶対に必要なのかと言えば、実はそうではありません。
1、遺産分割協議書が不要なケース
「遺産分割協議書」が不要なケースは次の3つです。
- 相続人が1人しかいない場合
- 遺言書が見つかり、その遺言書が形式通りに作成され、検認などにより法的効力が認められた場合
- 遺言書がなくても法定相続の通りに相続した場合
ただし、3番目の「遺言書がなくても法定相続の通りに相続した場合」は現実的に難しいと考えられます。後述する「遺産分割協議書を作成したほうが良いケース」でご案内いたします。
2、遺産分割協議書が必要なケース
「法定相続の通り」、「遺言書の内容が明確で、その通りに相続」、「相続人が1人」、「相続後も新たな財産が発見されなかった」場合以外はすべて必要となります。
- 遺言書とは異なる分割方法で分割したい場合
- 相続放棄者などがいる場合
- 法定相続通りであるが、株式、預貯金、不動産などの品目を特定して相続する場合
- 遺言書で指定されていない財産がある場合
遺言書に書かれていない財産がある場合には、その書かれていない財産に対し遺産分割協議及び協議書の作成が必要となります
3、遺産分割協議書を作成したほうが良いケース
- 遺言書がない場合
- 遺言書があっても、その後の手続きを行う上で支障があると考えられる場合
- 不動産以外の財産がほとんどないため、全体的に見て公平にならない場合
法定相続分通りに遺産分割を行う場合は、不動産、預貯金、株等、それぞれの品目全てが法定相続分に応じた持ち分での共有状態となります。不動産の登記や自動車の名義変更、売却などでも共有状態は非常に面倒ですので、品目は特定したほうが良いと考えられます。
遺産分割協議書が要求される場面
色々ありますが、代表的なもののみご紹介します。基本的に相続を証明するものですから、名義変更が多いです。
- 預貯金の名義変更や相続分の請求
- 株式名義変更
- 自動車所有権移転
- 相続税の申告
遺産分割協議の参加者
遺産分割協議は「全ての相続人」が参加する必要があります。参加方法は電話とかでも大丈夫です。
しかし、相続人全員が普段からコミュニケーションが取れる状態かどうかによって難易度が上がります。
私の友人の父親がなくなったときも、両親とも再婚同士。お互いに子供が別にいたので、遺産分割協議が1年以上も続きました。
このあたりのことが面倒だから何年も放置されてしまう例が後を絶たないわけですが、時間が経てばドンドン相続人も増えてしまいます。
きちんとした遺言があれば遺産分割協議の必要性は大幅に下がりますので、意思はどうあれ、生きているうちに遺言書を残すようにしましょう。
遺産分割協議書の記載内容
遺産分割協議書の作成は、特に決まった形式はありませんが、遺産分割を行ったことを明確にしておくようにしなければなりません。
- 遺産分割協議書であることを明確にする
- 被相続人の名前、死亡日を記載する
- 相続人を明確にする
- 各相続人がどの財産をどれだけ相続するかを明確に記載する
- 遺産分割協議をした日時を記載する
- 新たな遺産が出てきた場合は、その遺産について再び協議する旨を記載しておく
- 相続人全員の署名押印(実印)をし、各自1通ずつ保管する
- 遺産分割協議書が複数枚あるため割印(契印)が必要な場合は、相続人全員が割印をする
- 不動産は登記簿謄本にある記載をそのまま転記する
遺産分割協議書の作成期限
遺産分割協議書の作成期限は特にありませんが、全ての遺産が「共有状態」となってしまい、その後の手続きが困難になってしまいます。
土地の名義を変更するにも、亡くなった人名義の預貯金を引き出すにも、その他の多くの手続きを行うにも、この遺産分割協議書を添付書面として提出するように求められるからです。
できるだけ早く相続人を全て確定して、遺産分割協議書を作成しましょう。
遺産分割協議のやり直し・無効
協議から漏れた財産が見つかった場合、基本的に「やり直し」となってしまいます。
この場合、協議から漏れた財産についてだけ,、改めてどうするかを決める協議を行い、その財産の分配方法だけが書かれた遺産分割協議書を作りましょう。
最初に作成した遺産分割協議書に明確に「協議書に記載の無い財産が見つかった場合は○○がそれを取得するものとする」と記載があれば特に遺産分割協議の必要はありません。
また、協遺産分割協議に相続人全員が参加していなかったり、遺産分割協議に参加してはいけない人が参加していた遺場合は、の遺産分割協議自体が無効になります。
この場合は遺産分割協議の「やり直し」となってしまいます。
このページのまとめ
いかがでしたでしょうか?「遺産分割協議」は相続の中でも大イベントであることがお分かりいただけたと思います。
有効な遺言書が1本あるだけで避けることができるのですが・・・。
簡単にこのページのポイントを書いてみました。
- 1、第三者が見ても明確な分割内容になっていることに注意しよう
- 2、協議書には「分からなかった財産」についても記載しよう
- 3、遺産分割協議は「相続人全員」参加が必要
- 4、有効な遺言書を残そう