必要書類をそろえよう

マンションの売却にはたくさんの書類を用意する必要があります。「不動産業者に査定を依頼する時」や「媒介契約や売買契約を結ぶ時」、「登記」といった売買に関わるイベントに絡めて必要書類を依頼されるとこが多いと思います。しかし、どうせ用意しなければならない書類ですから、売却査定を依頼する前にできるだけ準備してしまいましょう。

書類の目的を確認しましょう

そもそも、マンション売却に関わる書類は何のために必要なのでしょうか?本質論から言えば、前述したような売買のイベントのためだけに必要なのではありません。不動産売買の手続きは「完全な所有権の移転」を徹底的に求めます。
「完全な所有権の移転」を達成するためには、

1、「真の権利者」である売主が、
2、買主に不利にならないよう情報提供を行い
3、買主に購入前の負担を全く負わせることなく
4、権利の移転(譲渡)を行う
必要があります。
「完全な所有権の移転」とは、言い換えると「安全な取引」となります。
つまり、必要書類の目的は次の2つになります、

  • 安全な取引を確定するための書類
  • マンションの現況を確認し買主へ説明するための書類

「真の権利者」の持つ意味

「真の権利者」を検索してしまうと、民法上の難しい内容がたくさん出てきますが、ここは簡単に概略と不動産業者から求められる内容を抑えておきましょう。不動産登記では「新しい家を新築した」など、新規の不動産については登記することが義務ですが、 所有権などの権利の移転、抵当権の設定登記については義務ではありません。理由は簡単です。登記しなければ第三者に対して「この権利は私の権利です。」と主張できなくなるだけだからです。国からすると、「する、しないは自己責任でどうぞ・・・」ということです。
つまり、登記簿に書かれている権利者は既に亡くなっているかもしれないし、相続されて共有になっているかもしれないのです。現状では「真の権利者」であることを1枚で証明することができるような公的書類は存在せず、いくつかの書類から総合的に権利者を特定せざるを得ないのです。
登記簿に記載されている権利者が「真の権利者」でないことは固定資産税にの徴収でもわかります。固定資産税は「固定資産課税台帳に登録されている人」(地方税法第343条)であり、登記簿の記載とは全く関係ありません。
不動産業者は売主と全ての必要書類の「権利者」が一致していることのみを確認しているのです。理由は不動産の売却がスムーズに実行できなくなるからです。
違った場合は一致させるように説得があるはずです。

重要ポイント!
特に本人確認と「真の権利者」を証明する書類は、形を変えて何度も要求されます。逆に言えば、詐欺を行うような人は各書類の穴をついて悪事を働いているのです。面倒ですが、頑張って揃えましょう。

マンション売却の必要書類一覧

具体的な必要書類は下記のとおりです。しかし、業者によってさらに多くなることがあります。あくまでも安全な取引を確保するための措置ですので、頑張って揃えましょう。
各書類の詳細な目的、重要度、無かった場合の対応については、下から「必要書類一覧」をダウンロードして確認してください。進捗のチェック欄もあります。

サンプルはこんな感じです。

1、安全な取引を確定するための書類

項目名 内容
身分証明書(運転免許証やパスポートなど 本人確認のため
実印 法律上の制限ではないが、通常実印で契約することが多い。
印鑑証明書 本人であることを証明するため。
住民票 登記上の住所と売主の現住所が異なる場合に必要。
登記済権利書または登記識別情報 売却物件の内容確認や登記の際に必要
固定資産税納税通知書 および固定資産税評価証明書 固定資産税や都市計画税など、税額の確認のため。また不動産売却の権利者であるかどうかを確認するため
ローン残高証明書、またはローン返済予定表 売却後にローン残らないかを確認し取引の安全性を確認
銀行口座書類 銀行通帳など。売却に関わる金銭のやり取りのため

 

2、マンションの現況を確認し買主へ説明するための書類

項目名 内容
マンションの管理規約、使用細則など 買主に重要事項説明を行うため
マンション維持費等の書類(管理費、修繕積立金、管理組合費、町内会費など) 買主に重要事項説明を行うため
耐震診断報告書・アスベスト使用調査報告書等 買主に重要事項説明を行うため。
その他の書類。地盤調査報告書・住宅性能評価書・既存住宅性能評価書等 買主に重要事項説明を行うため
購入時の契約書・重要事項説明書など 買主に重要事項説明を行うため
パンフレットおよび広告資料 買主に重要事項説明を行うため

 

聞いたことのない書類がある

上記リストにさらっと書いておりますが、マンションの売却においては重要度が低いものもありますし、そもそも耐震診断報告書・アスベスト使用調査報告書等は建設年度が新しいと存在していない可能性もあります。買主に対する重要事項説明として法律上説明するよう決められているので記載しているだけで、聞いたことのない(持っていない)書類については必死に探さず、「知りません」と答えましょう。不動産業者が管理会社に確認してくれます。

登記簿は必要?

このページでの必要書類には登記簿はありません。結構重要ですし、査定依頼をかければ不動産業者は必ず取得します。時間に余裕のある方は現物を見てみることをお勧めします。登記簿の申請には「地番」と「家屋番号」を記入しますが、「地番」や「家屋番号」は通常使っている住所とは違います。登記簿上の住所のようなものなので(ブルーマップというもので確認します)、申請した経験のない方は窓口で質問して申請してください。このページでは簡単に「登記簿」と書いていますが、最近は「登記事項証明書」と言います。郵送でも申請可能ですが、「地番」と「家屋番号」がわからないと申請できません。必ず管轄法務局で申請しますので、管轄の法務局を調べてから申請しましょう。下にリンクを貼っておきます。(手数料は1通600円です)

法務局 管轄のご案内

重要事項説明とは?

マンションをご自身で購入された方であれば覚えていらっしゃると思いますが、売買契約の前に「重要事項説明書」という書面を説明されたと思います。基本的に購入物件に対する「事実」が書かれています。必ず売買契約前に宅地建物取引士が、内容を記載した書面に記名押印し、その書面を交付した上で、口頭で説明を行わなければなりません。このページの必要書類の内容はほとんど重要事項説明書に記載されます。
法律で決められてる内容の他に「重要だ」と判断すればどんどん記載することが可能です。売主さんが「こういうことは載せてほしい」と要求することも可能です。この説明書によって買主に説明され、売買契約に至った場合、瑕疵担保責任(購入前に見つけられなかった物件のキズ=問題点)について責任を負わなくなります。小さいことでも、気になる部分は伝えておいた方がよいと思います。
ご興味がある方のためにリンクを貼っておきます。

重要事項説明書 – 不動産適正取引推進機構

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