家族が亡くなったら2(1~2ヶ月)

葬儀も終わってひと段落と思ったら大間違い。
ここから大変面倒な作業がひたすら続きます。

特に相続関係は資産の相続が中心ですが、「身分の継承」というやっかいな一面を持っています。
家族とは言え、他人のやっていることを完璧に把握することは非常に手間のかかる作業です。

「やることリスト」を作って抜けのないように頑張りましょう。

1~2ヶ月で終わらせたい手続き

実際の法的な期限はもっと後であっても、早めに終わらせておかないと多大な影響が出てしまうことがあります。

例を挙げると相続放棄(3ヶ月)、準確定申告(4ヶ月)、相続税の申告(10ヶ月)などです。いずれも故人の資産や負債、収入が明確になっていないと急には出来ません。早めに動かないと間に合わなくなってしまいます。

自分だけでは手に負えないこともあるので、当然プロの手を借りながら、出来るだけスムーズに進めましょう。

1、遺言書(遺言状)の有無の確認

「遺言書なんてあるかどうかもわからない」という方も多いと思います。

しかし、遺言書があるかないかによって、その後の手続は全く変わってきます。また、仮に遺産相続が終わってから(時には十数年も)経って遺言書が見つかってしまうと非常に面倒なことになります。

まずは公証役場へ行って「公正証書遺言」または「秘密証書遺言」が存在するかどうかを確認しましょう。

それでも見つからなければ「自筆証書遺言」を探しましょう。

「自筆証書遺言」を見つけるのは、まさに「宝探し」です。

遺言書の種類の詳細についてはこちらで詳しくご案内しています。
「知っておきたい相続4(遺言書)」へ

また、遺言書の探し方は、こちらで詳しくご案内しています。
「知っておきたい相続5(遺言書の探し方)」へ

2、法定相続人の確定

法定相続人は戸籍を調査することによって確定することが可能です。

ただし、戸籍を調査することは思っている以上に大変で、法定相続人を確定する作業が困難を極めることも珍しくありません。通常、一つの役所で出生から死亡の全ての戸籍が揃うことはあまりありません。

例えば、自分の親がなくなったとします。
この場合は、まず第一にご自分(子供)の本籍地で戸籍謄本(現在戸籍)を取得しましょう。
この戸籍謄本によって、亡くなった親とご自身が間違いなく親子関係にあるということを証明することができます。

次に、取得した自分の戸籍謄本を親の本籍地の役所へ持って行って(郵送申請の場合はコピーで可)、発行してもらうことができるようになります。

直接窓口へ行ける場合は、「出生から死亡までの戸籍を取れるだけ欲しい」と伝えましょう。
相続であることは大体わかるはずです。

実際に出てきたら、どの戸籍謄本が必要で、さらに必要があれば、どこに請求したらいいのかを丁寧に教えてくれるはずです。

そして、生まれてから亡くなるまでの戸籍を取得したら、子供の数や名前、認知した子供、養子の有無などを調べ、もしも子供がいない場合は、父母(祖父母)、兄弟(姉妹)の戸籍を調べていかなければなりません。

また、自分が法定相続人であると客観的に認めてもらうためにも、この戸籍で明らかにするしかありませんので、その場合は自分で戸籍を取得する必要があります。

この戸籍謄本の読み取りが不十分だと、遺産相続に多大な影響が出てしまいます。複雑な状況だと分かったら弁護士などに依頼しましょう。

3、相続財産の調査(相続財産目録の作成 )

法定相続人を確定させたら、次に相続財産の調査をして、「相続財産目録」を作成しましょう。
相続財産目録を作成することによって、被相続人(故人)にどれほど「プラスの財産」があったのか?「マイナスの財産」があったのかを明確にすることができます。

  • 1、相続財産調査の目的

相続財産調査の大きな目的は

  • 遺産分割協議に備える
  • 「単純承認・限定承認・相続放棄」のいずれかを選択する判断とする
  • の2つです。

    相続税の大まかな計算をすることも重要な目的ですが、この段階では遺産全体としてプラスかマイナスかを判断することが大事です。

    「相続放棄」の申述期限は3ヶ月。大きな負債が後で見つかっても、遺産分割協議書に押印してしまうと「単純承認した」と認定されてしまいますから、相続財産の調査は慎重に早くやりましょう。

    相続財産目録の作成費用は相続財産からの負担でできます。相続財産の計算は「税法上の計算」と「実態」が違うこともありますので、税理士なども活用して完璧に仕上げましょう

    • 2、相続財産調査の項目

    個別の事情によって項目範囲が広く、全てをご説明することはできませんが、「こういうことを調査するんだな」というイメージを掴んでいただくために下記の通り内容をご紹介します。

    プラス財産の項目 調査内容例
    金銭 預貯金、貸付金、売掛金
    不動産 農地、山林、借地権、借家権、抵当権、地上権など
    動産 自動車、バイク、電化製品、家具、骨董品、美術品、貴金属など
    有価証券 株券、国債、社債、小切手、手形など
    電話加入権 東京都の評価事例ですが1500円程度です。
    生命保険 亡くなった方が保険者で受取人になっている生命保険
    その他の財産 著作権、特許権、商標権、意匠権、著作権、ゴルフ会員権など

     

    マイナス財産の項目 調査内容例
    借金、ローン 住宅ローン、車のローン、クレジットカード、キャッシングなど
    保証債務 連帯保証しているなど
    損害賠償 損害賠償に対する未払い金
    未納税金 住民税、固定資産税などで未払い部分の税金など
    買掛金 (個人事業者の場合)

     

    相続財産に含まれないの項目 調査内容例
    祭祀具 墓地、墓石・仏具
    香典、弔慰金、葬儀費用
    受取人が指定されている死亡退職金 会社の社内規定によります。 相続の話2(みなし相続財産)で詳しくご説明しています。
    受取人が指定されている生命保険の保険金 指定されていないときは遺産分割の対象になります。相続の話2(みなし相続財産)で詳しくご説明しています。

     

    4、クレジットカードの解約

    故人の名義のクレジットカードなどは、解約しカードを廃棄する必要があります。
    手続きはカード会社によって違いがあるため、電話で確認して行いましょう。

    クレジットやキャッシュローンの未精算金・返済額が残っている場合は、遺産となりますから、相続人は相続放棄をしないかぎり、精算・返済する義務も負います。

    放っておくと引き落としによって故人の預金残高が遺産調査の時点から変わってしまったり、年会費が引き落とされたりと面倒なことになります。
    また、銀行が口座名義人の死亡を知ることで口座を凍結された場合、引き落としができなくなり、こちらも面倒です。

    速やかに解約手続きをしましょう。

    5、電気・ガス・水道・NHK・インターネットなどの名義変更、解約

    電気・ガス・水道といった公共料金やNHK、インターネットプロバイダ、テレビのCSなどの契約は

    • 亡くなった方が一人暮らしの場合は解約
    • 亡くなった方が配偶者や家族と同居の場合は名義変更

    の必要があります。

    放っておくと引き落としによって故人の預金残高が遺産調査の時点から変わってしまったり、年会費が引き落とされたりと面倒なことになります。
    また、クレジットカードの場合と同様に、銀行が口座名義人の死亡を知ることで口座を凍結された場合、引き落としができなくなります。

    状況に応じて、速やかに手続きをしましょう。

    このページのまとめ

    いかがでしたでしょうか?ご家族が亡くなった時に頭に浮かぶ「遺産分割協議」や「相続税」の話になるまでには、思ったよりたくさんの面倒な手続きがあることがお分かりいただけましたでしょうか。

    この時点で故人の生活環境や資産の状況を整理しておかないと、「準確定申告」、「相続税の計算」といった実際の行政手続きが手間取って期限に間に合わなくなってしまいます。

    ご家族がなくなってバタバタしているときですが、頑張りましょう。

    簡単にこのページのポイントを書いてみました。

    • 1、ご家族が亡くなったら、早めに相続関係の手続き準備を始めよう
    • 2、法定相続人の調査や相続資産の調査は、プロの手を借りて進めよう
    • 3、自分ひとりで仕事を抱え込むのは絶対にやめましょう
    • 4、簡単な名義の変更などはどんどん進めよう

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