売買契約締結

内覧の評判も上々。購入申込みがあり、「さあ、すぐに契約」という訳には行きません。当然、条件交渉があって、やっと契約にこぎつける事ができるのです。契約は最後の最後まで気を抜かずに行きましょう。

売買契約締結までのステップ

民法上、契約は申込みと承諾があれば成立しますが、不動産の売却に限らず実際の取引はそう簡単には行きません。
実務としての売買契約締結までのステップを簡単にご説明します。説明は簡単ですが、実際は非常に細かいところまで決めていきますので、不動産業者と協力しながら進めましょう。

ステップ1:購入申込み

購入希望者は「買付証明書」や「購入申込書」で予約を入れます。
購入価格や手付金の額、引き渡し時期などについて「この条件なら買います」という意思を売主に伝える書面です。

ステップ2:交渉開始

申込書の条件を検討して、売り主が契約の可能性があると思えば本格的な個別交渉が始まります。もちろん断ることも出来ます。中古マンションの場合、この段階では証拠金などの授受は一般的に発生しません。
また、一般的に具体的な交渉は、売主・買主の不動産会社間で行います。
条件が譲れなければ遠慮なく伝えましょう。

交渉の条件範囲は非常に広いですが、一般的に下記のような内容を決めていきます。

  • 売買価格
  • 手付金
  • 引き渡し時期
  • 瑕疵担保責任の期限
  • 建物や設備の補修を行うか否か
  • 固定資産税や公共料金などの精算方法や金額

ステップ3:売買契約書(案)の検討

上記条件交渉で同意する条件が整ったら、売買契約書(案)の作成になります。当然、不動産業者が作成してくれます。
自分の希望がしっかり書かれているか、買主との交渉の合意事項が明確になっているか、細かいところまで必ずチェックしてください。
不明な点は必ず不動産業者に確認しましょう。

ステップ4:売買契約書の締結

売主、買主とも売買契約書(案)に合意したところで、やっと売買契約書の作成、締結となります。
 

売買契約書の確認ポイント

売買契約書は、一般的に不動産適正取引推進機構が作成した標準契約書を利用することが多いです。大手で法務の専門部署があるところはオリジナルの契約書を使うこともあると思います。
 
売買契約書は別名37条書面とも言われ、宅地建物取引業法 第37条の規定で最低限記載しなければならない内容は明確で、作成した取引士が記名押印することが義務付けられています。
そういう意味では標準契約書と違った書式だから悪い契約書ということにはなりません。

マンションに限らず、不動産の売却は個別的な要素が非常に多いため「契約書添付の一覧表」などに集約されます。ここでは共通の基本的な項目を確認していきます。

契約書の基本項目

項目 内容
1、売買物件の表示 売買対象となる物件の表示に誤りがないかを確認します。
2、売買代金、手付金等の額、支払日 売買代金の確認、手付金の金額は妥当か(一般的には売買代金の1割前後が多い)、手付解除の期限、支払う期日に間違いないか
3、所有権の移転と引渡し 引っ越しの予定なども含め問題ないか判断します。不動産取引の実務では、残代金の支払い、所有権移転登記、鍵の引渡しが同日に行われます。慎重に決定しましょう。また、所有権移転登記の申請手続きに要する費用は「買主」と定めることが多いです。
4、公租公課の精算 固定資産税,都市計画税を日割りで精算します。(通常基準日は1月1日または4月1日)また、電気・ガス・水道などの公共料金。マンションの管理費・修繕積立費を日割りで精算します。

5、反社会的勢力排除 不動産取引からの「反社会的勢力の排除」を目的に、平成23年6月以降、反社会的勢力排除のための標準モデル条項が導入されています。違反すると非常に重いペナルティーが課されます。
6、ローン特約 万が一、買主が住宅ローンの審査が通らなかった場合、無条件にて売買契約解除することがきる「ローン特約」を売買契約に付けることが一般的です。ローンの本審査は売買契約締結後に始まるので、買主には有利な条項ですが、売主はドキドキしてしまいます。買付証明書(購入申込)が複数ある場合には、住宅ローンの審査の進捗具合(仮審査があります)で決定することも検討しましょう
7、負担の消除 対象物件を完全な所有権で譲渡できるかを確認します
8、付帯設備等の引渡し 中古マンションの場合は、室内の照明やエアコンなどの設備について明確にしておく必要があります。トラブルが多い項目でもありますので、契約前に付帯設備等の一覧表などを用いて一つ一つ確認しましょう。付帯設備については「瑕疵担保責任の規定から適用除外」とすることもあります。
9、手付解除 突発的な事情によって契約締結後に解除することも考えられます。そのため、手付解除の取り決めが記載されています。手付けの金額は、一般的には売買代金の10%~20%までの範囲で設定されることが多いです。
同意があれば、「手付解除を認めない」「手付解除の期間」などについて自由に決めることもできます。
10、引渡し前の物件の滅失・毀損 「危険負担」と言われる項目です。売買契約締結後に、天災で建物が全壊するなど、売主にも買主にも責任のない理由によって、購入予定物件が滅失・毀損した場合の項目です。
11、契約違反による解除 売主または買主のいずれかが契約違反をした場合には、相手方は契約を解除することができます。契約違反によって解除となった場合には、契約に違反した者が違約金等を支払うことが一般的です。具体的な事例なども不動産業者にしっかりと確認しましょう。
12、瑕疵担保責任 売買物件に、隠れた瑕疵(欠陥など)が発覚した場合、売主へ物件の修補や損害の賠償を求めることが可能です。物件の引き渡しからどのくらいの期間で責任を負うのかなどが取り決められます。瑕疵担保責任のトラブルは非常に多いことから、しっかりと契約内容を確認しましょう。

 

売買契約締結日の流れ

契約内容について合意したら、いよいよ売買契約の締結となります。売買契約締結日の流れは大体下記のとおりです。売主、不動産業者、買主の全員が集合します。金銭の授受を含め重要な事務手続きが発生しますので、必要書類の不備で迷惑がかからないように注意しましょう

スケジュール

多くの場合、仲介をする不動産業者の事務所になることが多いです。大体のスケジュールは下記のとおりです。

1、買主が宅地建物取引主任者から「重要事項説明書」の説明を受ける
2、売主到着。重要事項説明で問題が無ければ「売買契約書」を締結する
3、売買契約締結後、現金などにより売主に手付金を支払う

売主は上記2からの参加ですが、条文を1つ1つ読み上げて全員で内容確認します。その上で、契約書に署名・押印し、手付金等の授受を行います。2時間ほどかかるのではないでしょうか。

契約締結日に用意するもの

不備があると全員に迷惑がかかります。実際には直前に慌てて用意できるものばかりではないので、不動産業者が事前に確認とアドバイスしてくれると思います。一般的なものは下記のとおりです。

項目 内容
1、登記関係書類 登記識別情報や登記済権利書など
2、実印と印鑑証明書 一般的に実印を求められます。印鑑証明書は3ヶ月以内に取得したものです
3、身分証明書 免許証やパスポートなど
4、印紙代 売買価格によって金額が異なります。平成30年3月31日までの作成書類は1千万円超から5千万円までが1万円。5千万円超から1億円までが3万円です。
5、固定資産税評価証明書および固定資産税納税通知書 公租公課の精算の証明とともに、「真の権利者」の証明でもあります。
6、仲介手数料の半金 媒介契約の内容次第ですが、売買契約時に50%、引渡し時に50%の支払いが多いです。
7、マンションの管理書類等(管理規約、修繕積立金や管理費、会議議事録など) 買主への重要事項で既に確認されている内容です。不動産業者に(コピーなどで)事前に渡しているかもしれません。
8、その他 購入時の契約書、耐震診断報告書や住宅性能評価書、購入時のパンフレットなど。これも契約書以外は不動産業者に(コピーなどで)事前に渡しているかもしれません。

 

スケジュール表の再確認を!

当サイト売却手順1(Step4)で作成した「マンション売却スケジュール表」を再確認しましょう。
やることリストの進捗はいかがでしょうか?さすがにこの段階だと最初のスケジュール通りには進んでいないはずです。

契約書の締結が終わると、最後の引渡しまで1ヶ月~2ヶ月程度。ご自身の引越し先の手配だけでなく、ご家族の予定の進捗具合も確認しましょう。

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