知っておきたい相続2(みなし相続財産)

「知っておきたい相続1」では相続税の全体像をご理解いただくために、結構重要な話題の詳細を説明いたしませんでした。
細かいことに気を取られると迷子になってしまいます。まずは全体をざっくり覚えてから各論に入りましょう。

そういうわけでこのページでは補足として「知っておきたい相続1」の重要論点の1つである「みなし相続財産」をしっかりご説明いたします。

みなし相続財産

民法では被相続人が死亡時に被相続人本人に帰属していた一切の財産(権利義務)を相続財産と言います。
相続財産は、被相続人の死亡により被相続人から相続人に死亡時に移転します。

「みなし相続財産」は死亡時に被相続人に帰属していた財産ではないものの、死亡によって発生し、ほとんど相続財産と変わりない財産のことを言います。
代表的なものは①生命保険金と②死亡退職金の2つです。
共通の考え方も多いので確認しやすいと思います。

また、「相続税の計算」の話と、保険金や死亡退職金の「遺産分割」(受取)の話がごっちゃにならないように注意して読みましょう。

1、「死亡保険金」は相続税の課税対象となるのか?

生命保険の死亡保険金が相続税の対象になるかどうかは、保険のかけ方によって変わります。
基本的には契約者、被保険者、受取人の関係によって変わります。
また、受取り方でも違いがあります。

下の表に簡単なパターンを書いておきました。

1、相続税になるパターン

契約者 被保険者 受取人
妻(又は子)

 

契約者(保険金支払者)と被保険者が同一で、その人が無くなった場合で、死亡時一括で保険金を受け取った場合です。
受取が年金形式だと所得税(雑所得)が課せられます。

以前に投稿した「相続の話1」の「手順1」の事例で「契約者(保険金支払者)と被保険者が被相続人(死亡した人)。受取人が妻で保険金を死亡時に一括して受け取ったものとします。」と記載したのはここに理由があります。

2、所得税になるパターン

契約者 被保険者 受取人

 

「保険契約者と保険金の受取人が同じ」となっていると、契約者となっている人の所得となります。またこの場合、所得税に加えて住民税も課せられることになります。

3、贈与税になるパターン

契約者 被保険者 受取人

 

保険金の支払いをしていた夫から、子に「妻の死亡保険金を贈与した」形になっています。この場合、子供の税負担が大きくなります。
妻の死亡保険金を明らかに子供に残したい意思があれば、契約者を子供にすると一時所得となり、税負担が軽くなる場合があります。
保険会社でも対応してくれると思うので、是非相談してみてはいかがでしょうか?

2、「死亡退職金」は相続税の課税対象となるのか?

「死亡退職金」とは、死亡退職した従業員に対して退職金の規定により支払われる退職金のことです。
退職金と同じように勤務年数や最終的な役位から計算された金額に加えて、未支払い分の給与や慰労金などの要素が加味されたものが支払われます。
死亡退職金は死亡保険金と同様に「みなし財産」として課税対象となります。

みなし財産の非課税限度枠

「生命保険金(死亡保険金)」、「死亡退職金」ともに相続税の計算時には非課税限度枠が設定されています。
死亡保険金、死亡退職金とも、それぞれ

500万円×法定相続人の数

が非課税限度枠として算入することができます。

「相続の話1」参照

「みなし財産」は遺産分割の対象になるのか?

生命保険金は相続財産ではなく、保険契約に基づき受取人が受け取るものでああるため、受取人固有の財産として考えることができます。よって、生命保険金が遺産分割の対象とならず、原則として遺産分割協議書への記載は不要ということになります。この場合には保険契約に定められた受取人が生命保険金を受け取ることとなります。

一方、死亡退職金は、社内規程で定められた受取人が受け取ることとなります。
また、遺族の生活保障を目的としていると考えられているため、受取人固有の権利として考えることができます。従って、、死亡退職金は原則として遺産分割の対象とはなりませんので遺産分割協議書に記載することも不要です。
ここでの注意点は「社内規定」です。
明確に受取人の定めない場合、当然に受取人固有の財産と考えることには難しく、場合によっては遺産分割の対象となることも考えられます。

特別受益とみなし財産

相続人の中に、被相続人から遺贈を受けたり、贈与を受けたりした者がいる場合、この者が他の相続人と同じ相続分を受けられるとすれば不公平になります。
そこで、民法903条では、相続人間の公平を図ることを目的として、特別受益分(①遺贈を受けた、②被相続人の生前に結婚や養子縁組の為に財産の贈与を受けた、③住宅資金など、生計の為に贈与を受けた など)を相続財産に持ち戻して計算し、各相続人の相続分を算定することにしています。

それでは、生命保険金など「みなし財産」はどうなるのでしょうか?
「みなし財産」は前述したように、原則「受取人固有の権利」です。
判例では原則として「生命保険金は特別受益には当たらない」としていますが、そうでない判決もあります。

この場合、重要なのは「総遺産額における生命保険金の割合」です。具体的に何%以上と示されているわけではありませんが、総遺産額の61%が生命保険金が占めていたケースでは「特別受益に準じて取り扱う」としています。

このページのまとめ

いかがでしたでしょうか?特に生命保険金は皆様が目にする可能性が非情に高く、相続放棄しても受け取る権利があることを確認してください。

是非、参考にしていただいて生命保険金のかけ方の見直しなども検討されてはいかがでしょうか?

簡単にこのページのポイントを書いてみました。

  • 1、「生命保険金」、「死亡退職金」はみなし財産である
  • 2、みなし財産は基本的に受取人固有の財産である
  • 3、生命保険金は受け取り方で課税方法が違う
  • 4、みなし財産は非課税限度枠があり、全額に課税されない

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