相続した不動産の売却と税金

両親が亡くなって、相続した家・・・。

自分は持ち家もあるので住む予定もなし・・・。

「思い出もたくさんあるし、もったいないけど売却しよう」

なんて、よくある話です。

しかし、売却すれば当然税金もかかるはず。

こうした問題を抱える皆様に相続した家を売却する場合の税金と注意点をアドバイスいたします。

もっとも重要なのは売買契約書

「先祖代々の家」などは除いて、不動産の売却で最も重要なのは売買契約書です。

「家の売却」というと、売却価格ばかりに目が行ってしまいますが、それは、自身で購入した場合、売買契約書や購入時の証拠書類は全て揃っているという前提の話です。

なぜか。

それは、譲渡所得の税金の計算に大きな違いが出るからです。

書き間違えました。

とてつもなく大きな違いが出るからです。

相続した不動産の譲渡所得税の計算

不動産の譲渡所得税の計算は非常に簡単です。

「売却価格」-「購入価格」(取得費用は差し引けます)=「譲渡所得」

です。

では、相続(生前贈与でも同じです。)した家の「購入価格」はいくらになるのでしょうか?

相続税の計算で使用した価格だと思っていませんか?

正解は「亡くなった方が購入した価格」です。


一方、売買契約書が無く「購入価格」が分からなかった場合はどうなるのでしょうか?

正解は「売却価格の5%」です。(ギャー最悪!!)

例えば、2000万円で亡くなった人が購入した物件を3000万円で売却した場合、
(複雑になるので、購入費用とか抜いてます)

3000万円(売却価格)-2000万円(購入価格)=1000万円(譲渡所得)

となります。

この1000万円にのみ(条件によって違いますが)税率がかかります。一応長期譲渡所得税の20%(所得税15%+住民税5%)として200万円となります。


では逆に、「購入価格」が「売却価格」よりも高い場合はどうでしょう?

損しているので、税金はかかりません。

それでは、本題の購入価格が不明な場合はどうなるのでしょうか?

正解は「売却価格の5%」なので

3000万円(売却価格)-150万円(ルールとしての購入価格)=2850万円(儲け?)

2850万円に譲渡所得税の20%(所得税15%+住民税5%)をかけると譲渡所得税は驚異の570万円!!となります。

ちなみに、所有期間と税率の正確な関係は次の通りです。是非参考にしてください。

なお、原則として所有期間の起算時点は被相続人(亡くなった人)が所有を開始した時点です。

相続開始時点ではありません

さらに、上記税額に対して、復興特別所得税が2.1%かかります。


このように、購入価格が分からないだけで税額は大きく違ってしまいます。

先祖代々の家で、全く貨幣価値の違う状態であれば、とてつもなく広い土地を1000円(購入時では大金)で購入したなんてこともあるでしょう。

この場合、購入金額は購入時と同じ1000円になってしまうので、仮に契約書があっても「購入価格は分からない!!」と言ったほうが良いかもしいれません。

しかし、通常は売買契約書があったほうが節税になるので、被相続人(両親や祖父母)が生きているうちに売買契約書を必ず探しておきましょう。

売却時の状況で変わる税金対策

ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、不動産の売却については様々な特例(優遇税制措置)があります。

しかし、どんな状況でも使えるわけでなく、限られた条件でしか活用できません。

相続に関わる税金は状況によって、特例などの優遇税制対策を利用できる条件が違い、非常に奥が深いです。

全てのケースを網羅することはできませんが、状況別に利用できる優遇措置をアドバイスいたします。

相続した家に居住している場合

売却する家が、自宅としてわれていた場合には、3000万円の特別控除という特例を使うことができます。

売却益から3000万円無かったことにしてくれます。

ただし、これには条件があります。

  • 確定申告をすること
  • 売り手と買い手が、親子や夫婦、自分の経営する法人などの特殊な関係がないこと

などです。

もともと無くなった人(両親等)と同居をしていたのであれば、相続した後も、子供の自宅になりますので、3000万円の特別控除が使えます。

相続した家が空家になっている場合

空家の場合は全く特別控除は使えません!と書きたいところですが、平成27年の税制改正によって、相続後、空き家となった自宅を売却しても3000万円の特別控除が使えるようになりました。

しかし、条件が厳しい・・・

  • 昭和56年5月31日以前に建築された物件であること
  • 相続開始時に亡くなった人が1人で住んでいたこと
  • 一定の耐震基準になるようにリフォームするか、建物を取り壊して売却すること
  • 売却代金が1億円以下になること

などです。

条件の中に出てくる「昭和56年5月31日」というのは、建築基準法が「新耐震基準」に変更されたときです。

つまり

現在の耐震基準を満たしていない家を、耐震基準に合うようにリフォームか取り壊すようにすれば、税金をなんとかしてあげますということでしょう。

リフォームでも、取り壊しでも何百万もかかりますから、費用対効果で検討しましょう。

ちなみに、この特例は平成31年12月31日までの売却に限定されていますのでご注意ください。

取得費加算の特例

相続してから3年10ヶ月以内であれば、「取得費加算の特例」というものがあります。

今までご紹介した税金の計算は「売却した利益」に対する控除でしたが、この特例はちょっと違います。

売却価格からマイナスする「物件の購入価格」の取得費用を大きくして、利益(譲渡利益)を少なくするものです。

ではどうやって「取得費」を大きくするのか?

それは、その不動産を相続したときに支払った相続税です。

取得費加算の特例は、相続税を払った人が相続したものを売却した場合にみに使える特例です。

また、夫婦間では利用できません

両親の家を相続して、相続税を支払った方は税金を納めすぎないよう、しっかり調べてしてみてください。

困ったら税理士へ相談しよう

こういう問題が起こる前に相続が予測できる不動産については、生きているうちに売却したり、戦略的に同居するなど、しっかり対策を打っておくことをお勧めします。

しかし、急に両親が亡くなってしまうなど、仕方のない場合もあります。

「売買契約書が見つからない」場合、非常に壁が高く、理論武装がしっかりしていないとできませんが、状況証拠(分譲のパンフレットや住宅ローンの会社に残る資料)を集めて税務署が購入費用として認めるケースがあります。

ただし、税務署と申告者の裁判沙汰になることもあります。

いずれにしてもプロの知識と経験が必要ですから、困ったときは相続に強い税理士に相談しましょう。

このページのまとめ

簡単にこのページのポイントを書いてみました。

  • 1、家の売却は購入時の「売買契約書」が最も重要
  • 2、相続後に「空家」にするのは損
  • 3、生きているうちに相続の相談をしておこう
  • 4、困ったら早めに相続に強い税理士に相談しよう

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