知っておきたい相続9(共有物分割請求)
遺産分割協議が揉めたり、また自分の両親や祖父母の代の相続の時点でしっかりとした相続手続きが行われていなかったことによって、残念ながら不動産の共有状態になっている方もいらっしゃるのではないのでしょうか?
経緯はどうであれ、結果的に相続財産が「共有状態」になってしまった場合、共有者全員が同意しない限り、不動産を売却することはできません。
どうすればいいのでしょうか?
日本の法律では「一物一権主義」という基本的な考え方があり、法律上「共有状態」は望ましくない状態です。
「一物一権主義」とは、「1つのものには1つの所有権しか存在しない」という考え方です。
民法ではこういう望ましくない状態を解消するため、「共有物分割請求」という規定があります。
今回は「共有状態」を解消するための方法をアドバイスしたいと思います。
共有物分割請求までの道のり
不動産を共有している場合、おそらく一般的なケースでは、まずはじめに「売却して自分の所有分を渡して欲しい」と話し合いが始まるでしょう。
そして、不動産の売却に応じてもらえなかった場合、次に「だったら、自分の持分を買い取って欲しい」と交渉するでしょう。
しかし、買い取るお金を準備することは大変です。こういうようなケースで応じてもらえなかった場合に登場するのが、この「共有物分割請求」です。
共有物分割請求の方法
当事者同士の共有分割協議がまとまらなかった場合以下のような手続きになります。
- 裁判所の調停による共有物分割請求
- 裁判による共有物分割請求
裁判所の調停委員が当事者間の調整役となり、要望を調整します。調停がうまくいけば、調停調書を作成します。
「共有物分割訴訟」といいます。調停でもまったく話の折り合いがつかない場合や、話し合い自体に応じないといったケースは裁判となります。
その他の共有状態解決方法
共有状態を解消したい方の中には、お金や権利そのものよりも、「面倒な人間関係から離脱したい」という目的が一番大きい場合もあるでしょう。
このような場合には、以下のような解決方法があります。
- 共有持分の放棄
- 共有持分の処分
・・・共有者は自己の共有持分を放棄することで共有関係から離脱することです。この場合、放棄された共有持分は、民法上、ほかの共有者に帰属するものとされています。
・・・共有持分の処分は、自分の共有持分を第三者に譲渡してしまうこで、共有状態から離脱すること
自分の共有持分のみを譲渡できるのか?
原則として自分の共有持分のみを譲渡することは可能です。
また、共有持分の買取のみを専門的に行っている不動産業者もあります。
デメリットとして、買い取り価格は非常に安くなってしまうと思います。
理由は、買取業者も「共有状態」なりますから粘り強い交渉と「共有物買取請求」によって不動産のすべての所有権を獲得しないと、土地全体の利用や売却などによる企業としてのメリットがなくなるため、通常の不動産取得に比べて膨大なコストが掛かってしまうからです。
何代にも渡り相続などの所有権移転登記を放置して、知らない間に共有状態になってしまった場合や、人間関係が崩壊していて今後交渉の進展が見られない場合には活用してみてはいかがでしょうか?
このページのまとめ
いかがでしたでしょうか?不動産の共有状態を解消するのはとても大変な作業であることがお分かりいただけたと思います。
簡単にこのページのポイントを書いてみました。
- 1、日本の法律の基本的な考え方は「一物一権主義」
- 2、交渉がうまく行かなければ調停、裁判で解決可能
- 3、共有持分は放棄することも可能
- 4、共有持分のみ売却することも可能。ただし金銭的メリットは期待できない