マンション理事会だけではパワー不足!専門委員会を設置しよう!
マンション管理組合の理事会は短い就任期間において多くの問題に対して対応しなければなりません。
日常の管理としては前年の理事会から引き継いだ予算の範囲内でほとんどは実行できますが、
- 現状の問題点の洗い出し
- 長期にわたる検討事項の継続審議
- 次回総会のための予算・議案作り
など、月に一度の理事会ではなかなか調査や検討が進まないのが実態ではないでしょうか?
そこで、多くのマンションでは理事会の下に「専門委員会」の設置をして
- 専門的な知識の必要な課題の検討
- 短期間で少人数が一気に情報収集や検討をしたい場合
- 管理費以外の活動費用が必要な課題の検討、解決
- 複数年にわたる長期的な課題の検討
などに対応しています。
「専門委員会」はマンションによって「諮問委員会」など違う名称で呼ぶことがありますが、、国土交通省の資料などでは「専門委員会」と呼ぶことが一般的なのでこのサイトでは「専門委員会」と呼ぶこととします。
今回は上手に専門委員会を活用できるよう、その仕組みづくりや活用方法をご紹介いたします。
このページの目次
専門委員会の必要性
当サイトの案内人である私自身も、住んでいるマンションの専門委員会には何度も参加したことがあります。
管理組合の役員(理事会)の選び方は輪番制にしろ抽選にしろ公平な選び方が大多数です。
長年立候補して理事長をやり続けるなんていうのはかなり怪しいですよね。
むしろ出来れば引き受けたくない人のほうが多いはずです。
つまり、理事会の役員は現在抱えている問題に対して適切なメンバーが選出されて選ばれているわけではないのです。
しかし、マンション全体を見回してみると
- 個別の課題に対して専門的な知識を持っている
- 意見が違う住民のまとめ役として重要
- 既に定年して短期間に情報収集する時間がある
といった重要な人材が豊富にいるものです。
「今年は理事会の役員ではないから活用できない」というのは単純に「もったいない」だけの話ではありません。
「将来の資産価値」を下げてしまうことになってしまうのです。
国土交通省の「標準管理規約」55条にも「専門委員会の設置」という条項があります。
理事会が求められている仕事の内容から考えて、当然設置されるものだという認識があるのではないでしょうか?
私の個人的な意見ですが、しっかりした管理運営をするためには、期間の長短はありますが最低でも毎年1つくらいは「専門委員会」が設置されているのが普通だと考えます。
専門委員会の効果
「専門委員会を立ち上げて検討する」という効果は、実際の「問題解決能力の向上」という目的以外にも「重要な問題として理事会が検討し、しっかりと対応してますよ。」というアピールの効果があります。
この「アピール」は単なる「表向きの主張」ではなく、
- 重要な課題に対して居住者の注意を引き付ける
- 「数人の理事会のみで重要な決定をした」という印象を与えない
- 次期総会で理事会運営費以外の費用を得ることができる
- 課題によっては短期間に集中した検討ができる
という実質的な効果です。
現実に専門委員会が活動を始めた場合、
- 重要な課題の設定
- メンバーの選定
- 活動内容
- 進捗の報告(議事録の掲示や配布)
- アンケート調査の実施
など、多くの情報公開や収集が必要になるため、一部の非協力的な組合員から総会当日になって「情報が伝わっていない」などのクレームを受けることが少なく、総会決議に対して非常に有利に働きます。
逆に専門委員会をいい加減に運営すると、総会前に組合員や居住者からクレームを受けて総会議題にさえならなくなる可能性もあります。
真剣に理事会が課題に取り組むのであれば、応援団を多く獲得できるので効果は絶大です。
専門委員会の位置づけ
前述いたしましたが、国土交通省の「標準管理規約」にも「専門委員会の設置」が記載されています。
(専門委員会の設置)
第55条
1.理事会は、その責任と権限の範囲内において、専門委員会を設置し、特定の課題を調査又は検討させることができる。
2.専門委員会は、調査又は検討した結果を理事会に具申する。
この場合、専門委員会の位置づけは「理事会に対し検討結果をまとめ、委員会としての課題の方向性を決めて報告する」となります。
ちなみに、私の住んでいるマンションでは「総会提出議案作成のための補佐」という位置づけとなっています。
しかし後者は「総会議案作成の補佐」ですから最後の総会での説明および可決されるまで説明責任を負います。
したがって、マンションによって位置づけはしっかりと決める必要があると思います。
専門委員会で検討する内容
「こういう問題のときには専門委員会を設置したほうが良い」というような教科書的なアドバイスはないのですが、多くのマンションでは下記のような課題を検討するために専門委員会を設置することが多いです。
一般的に設置される専門委員会
項目 | 内容 |
---|---|
長期修繕計画委員会 | 数年に一度見直しが必要な長期修繕計画を専門委員会として設置することは一般的です。 長期修繕計画は「見直し」を行うのが目的で、現状を考えどれだけの修繕をいつ行うかをスケジューリングするものです。 この見直し作業で「いつ頃にどれだけのお金を使って資産価値を維持し、支障のない生活を送れるようにできるか」が決まります。 この中で重要なのは「お金」です。 しかし、
などの状況の変化によって積立金額を変更する必要があるのです。 いざ、修繕を実施するときになって「お金がない」といったトラブルにならないように注意深く検討しましょう。 |
大規模修繕委員会 | 大規模修繕委員会は、実際に修繕を行う1~2年前から活動するのが一般的です。長期修繕計画に比べると具体的で詳細な見積もりを検討することになります。
通常、修繕を行う年の「総会の承認」によって実施されますが、
などを、長期にわたって情報収集したり情報提供したりすることで「総会の可決」をスムーズに得ることができます。
|
規約改正委員会 | 管理規約の改正は「総会の特別決議」が必要なこともあり、委員会を設置することが多いようです。 委員会の目的が
のどれなのかによって委員会の規模は変わります。 特に全体的な見直しの場合は、一部の細則の変更が管理規約の内容と矛盾することなども考えられ、非常に緻密な作業が必要です。 |
ペット飼育委員会 | ペットを飼っている区分所有者同士で委員を構成し話し合うことが多いようです。 飼育方法や共用施設の使用のルール、管理組合への届出徹底やクレーム発生時の対応をするために設置するようです。 また、最近では「小動物飼育細則」を作成し、有害な動物や爬虫類などの規制を行うこともあるようです。 |
時代の変化に対応するために設置される専門委員会
項目 | 内容 |
---|---|
駐車場委員会 | 最近では自動車を保有する人が少なくなり、駐車場収入が激減することがあります。この場合、駐車場を外部に貸し出して有効活用したり、カーシェアなどで企業に貸し出して収入を得ようとすることがあります。外部の人間が敷地内に自由に入る可能性もあり、専門委員会を設置して検討します。 |
リフォーム問題委員会 | 専有部分のリフォーム需要が高まっている現在、管理規約の制定当時には想定しなかった技術や工法が出てきています。マンション全体に与える影響があることも考えられ、そのルールや審査基準作りをします。 |
大規模災害委員会 | 東日本大震災以降、被災地のマンションでは被災前の準備やコミュニケーションの取り方で、マンション毎にかなりの差が出ていたことも分析されています。緊急時に理事会が機能しないことを想定したルール作りなど細かな規定作りをします。 |
専門委員会設置・運営の手順
実際の委員会の設置や運営は非常に手間がかかります。
区分所有者との対立が発生したり、委員会と理事会が反発するようなことがないように、丁寧な運営を心がけましょう。
国土交通省の「標準管理規約」で規定している専門委員会の位置づけをんもとに、基本的な運営のアドバイスを書きに示します。
もっとマンション全体で一体感を持てるアイデアを出してしっかりと運営していきましょう。
1、委員会の設置
標準管理規約では、委員会の設置は理事会に権限があります。
まずは、理事会で委員会の設置を決定し議事録に残します。議事録への記載内容は下記のとおりです。
- 委員会設置の決定
- 委員会の名称
- 委員会の目的
- 委員会の活動期限
- 委員長(理事会メンバーがよい。区分所有者からの意見やクレームの窓口となります。)の氏名
- 委員メンバーの召集方法
となります。
2、委員会のメンバーと第1回の開催予定
委員会設置を決定した次の理事会に委員就任を承諾したメンバーを召集し、上記の委員会設置の目的などを再度通達します。
また、委員の役割を理事会で決定します。
この際、第1回委員会の日程を決め、理事会の議事録に残します。
専門委員会のメンバー選定の特長は「必要な人材を、必要な人数だけ恣意的に選出することができる」ということです。
機動力を失わないように最低限で最大効果が得られる人数を招集しましょう。
3、委員会議事録を掲示・配布
委員会が活動開始したら、毎回議事録を作成し、掲示・配布をしましょう。
また、居住者の質問に耐えられるように、使った資料などは管理室などで閲覧可能な状態にしておきましょう。
4、理事会への報告
毎月、委員の代表者は理事会出席し活動報告をします。
必ず「活動の詳細が明確に示されない」などとクレームをつけてくる区分所有者がいます。
活動の進捗具合を理事会の議事録にも記載し、後になって区分所有者から「知らなかった」と言わせない努力をしておきましょう。
5、委員会の解散を宣言する
最終報告が終わったら、理事会へ報告し、その理事会議事録に
- 具申された委員会の最終報告内容
- 委員会の目的を達成したこと
- 委員会メンバーへの委員会参画へのお礼
- 委員会の解散の宣言
を記載しましょう。
6、総会への委員の参加
専門委員会のメンバーは必ず次回の総会へ出席し、区分所有者からの質問に備えましょう。
理事会にとってはとても心強い応援団となります。
専門委員会活動の注意点
専門委員会活動は理事会の負担を減らし、迅速な課題への対応ができる一方で注意しなければならないポイントがいくつかあります。
せっかくの規定ですから上手に使いこなしましょう。
1、専門委員会を設置する権限
専門委員会を「誰の権限でいつ作れるのか」は「管理規約にどのような規定をしたか」によります。
上記のような説明は国土交通省の標準管理規約をもとに記載していて、「総会で専門委員会の設置の承認をする」という規定があるとその規定に従わなければなりません。
また、設置する権限=解散する権限と捕らえて説明しておりますが、「勝手に解散した」というクレームの不安があれば、解散権についても管理規約に記載しておくことも検討しましょう。
2、専門委員会の予算
国土交通省は前述した標準管理規約55条に関するコメントも出しています。
その中で、
(コメント)
① 専門委員会の検討対象が理事会の責任と権限を超える事項である場合や、理事会活動に認められている経費以上の費用が 専門委員会の検討に必要となる場合、運営細則の制定が必要な場合等には、専門委員会の設置に総会の決議が必要となる。
② 専門委員会は、検討対象に関心が強い組合員を中心に構成されるものである。必要に応じ検討対象に関する専門的知識を有する 者(組合員以外も含む)の参加を求めることができる。
と解説しています。
この条文の注意点ですが、
上記1項では「理事会の権限で設置できる」と書いてありますが、「特別な予算を理事会が決定できる」とは書いてありません。
委員会に必要な別の予算が必要な場合は「総会の承認」が必要なことに注意しましょう。
このページのまとめ
簡単にこのページのポイントを書いてみました。
- 1、専門委員会の活用で理事会の負担を減らそう
- 2、専門委員会を設置し、迅速で細やかな課題の解決を図ろう
- 3、専門委員会の位置づけをしっかり検討しよう
- 4、専門委員会の予算は理事会では決定できない