失敗しない生前贈与3(住宅取得資金贈与の特例)
「失敗しない生前贈与2」では贈与目的が明確でない(受贈者が用途を決められる)贈与をご説明いたしました。
今回は目的が明確な「住宅取得資金贈与の特例」をご紹介いたします。
このページの目次
住宅取得資金贈与の特例
1、「住宅取得資金贈与の特例」とは?
簡単に言うと、非課税贈与の年間110万円のほかに、子供および孫が住宅を購入するための資金援助として、700万円(認定長期優良住宅の場合には1200万円)まで贈与しても非課税となるという制度です。
「国土交通省告示第389号」に明記されていますが、読んでも分からないので、専門家に聞きましょう。制度利用には証明書が必要です。
要するに、「高額な家なので、その分税金も免除」くらいに覚えておけば良いと思います。
2、「住宅取得資金贈与の特例」の要件
一覧にまとめてご説明いたします。
項目 | 内容 |
---|---|
1、目的 | 住宅の取得に充てるために金銭の贈与を受け、実際にその金銭を住宅の取得資金に充てていること。 不動産そのものの贈与および住宅取得後に贈与を受けた金銭は対象になりません |
2、贈与者 | 直系の父母・祖父母からの贈与であること。 従って、娘の配偶者名義などでは適用できません。 |
3、受贈者 | 贈与を受ける者がその年の1月1日において20歳以上であること。 |
4、居住状態 | 贈与の翌年3月15日までに住宅の引渡を受け、同日までに居住していること、又は居住することが確実であると見込まれていること。 つまり、居住目的でないと適用できません。 |
5、物件の大きさ | 建物の登記簿面積が50m2以上240m2以下であること |
6、築年数 | 中古住宅の場合は建物の築年数が、マンション等耐火建築物なら25年、木造等耐火建築物以外なら20年以内であること |
7、制度の利用制限 | 平成21年分から平成28年までの贈与税の申告でこの制度を利用していないこと |
8、申告 | 贈与の翌年の2月1日から3月15日までに贈与税の申告を行っていること。 納税額がなくても申告する必要があります。 |
9、受贈者の収入制限 | 贈与を受ける者の贈与を受けた年の所得金額が2,000万円以下であること |
3、他の非課税制度との併用は?
この特例は他の非課税贈与の制度と併用して使うことが出来ます。
例えば、「暦年課税」を選択している場合、
700万円(又は1200万円)+110万円」
を適用でき、「相続時精算課税制度」を選択すれば
700万円(又は1200万円)+2500万円」
を非課税で贈与することができます。
4、制度利用時の注意点
この制度の最大の注意点は、相続時に「小規模宅地等の特例」が使えなくなることです。
「相続時生産課税制度」を選択した場合でも同様ですが、平成27年の法改正で、相続税の基礎控除は大きく減額されました。
その中で、「小規模宅地等の特例」は要件さえ合えば80%もの宅地の評価減ができる重要な問題です。
この要件に合っている人は贈与する相手、内容を十分に検討しておきましょう。
「小規模宅地等の特例」が適用できる要件
「小規模宅地等の特例」は「下記の要件が揃えば、相続財産としての価値を80%減額できるという制度です。
細かい事を言えば、貸付事業用宅地であっても50%の減額ができるという規定がありますが、今回は「居住用宅地」のみで説明します。
項目 | 内容 |
---|---|
1、限度面積 | 330㎡ |
2、減額割合 | 80% |
3、居住状況 | 相続開始の直前において被相続人(または生計が同じ親族)が居住していた宅地。 |
4、居住状態 | ①被相続人が居住していた宅地 (被相続人の居住の用に供されていた宅地等) ②被相続人と生計を共にしていた親族が居住していた宅地 (被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の居住の用に供されていた宅地等) |
上の表の4、居住状態というのが問題です。
この要件はかなり寛容で、「「同居していた親族」や「同居していない親族」でも「亡くなった方に配偶者がいない場合」、「単身赴任で持ち家がない」といった場合にはこの制度を適用できます。
つまり、「住宅取得資金贈与の特例」を利用してしまうと、「相続税との関係で損なのではないか?」という考え方もあります。
特に、この議論は税理士さんのホームページに書かれています。
しかし、あくまで個人的な見解ですが、私=案内人は「満額でなくても、贈与できる財力があれば利用すべき」と思っています。
なぜなら、相続時に親族で揉め事が発生した場合、相続税の申告に遅れがあれば特例の適用ができなくなってしまうからです。
遺産を残される方が元気なうちに、自分の意向で目的をしっかりした財産を振り分けておくことはとても重要です。
少なくとも、本制度を利用して購入した不動産は権利関係が明確になります。
相続財産としての不動産が「共有状態」なってしまっては売ることさえできません。
お金だけではない、別の切り口からもしっかり考えて制度を利用しましょう。
このページのまとめ
簡単にこのページのポイントを書いてみました。
- 1、「住宅取得資金贈与の特例」は他の非課税制度と併用できる
- 2、直系親族にしか適用できない
- 3、メリットとデメリットをよく理解しよう
- 4、色々な切り口から考えて検討しよう