徹底検証!年収900万円でいくらの家が買えるのか?
現実に「家を買おう!」と思っても、心配なのは資金計画。
「年収○○○万円でいくらの家が買えるのか」をアドバイスする徹底検証シリーズ第5回目は年収900万円です。
よく耳にするのは「8倍ルール」。「年収の8倍までの家なら大丈夫」という都市伝説です。
また、「収入の30%なら住宅ローンの支払いは大丈夫」なんてことも聞きます。
本当でしょうか?
「銀行が貸してくれる金額」=「返済できる金額」ということは絶対にありません。。
ちょっと前まで住宅ローンは 「年収の5倍まで」が常識だったのです。
住宅ローンはとても長いお付き合いになりますから、比率(%)ではなく、具体的な金額を出して検討するようにしましょう。
このページの目次
検証手順
前回に引き続き検証手順は下記の順序で行います。
くどいようですが、かなり長い記事で、途中は計算ばかり。
ですので、今回も「シュミレーションのための定義」のあとにすぐ、「結論」を書きます。ご興味のある方は計算根拠やアドバイスもご覧ください。
- 計算の前提となる仕事、家族構成の定義
- 結論
- 所得税の計算
- 住民税の計算
- 上記2,3によって概算可処分所得の確定
- 住宅ローンシュミレーション
- 購入できる家の価格をアドバイス
以上です。
全体的に概算ですが、現在(平成30年)は超低金利の不動産バブル状態なので、お金が余っているのです。
融資先を探している銀行や、価格が高騰しているときに売りたい不動産業者の営業トークに負けて将来「住宅ローン破綻」なんてことのないようにアドバイスできればと願っています。
それでは検証を始めましょう。
計算の前提となる仕事、家族構成の定義
年収900万円の可処分所得はいったいいくらなのでしょうか?
可処分所得の計算は、配偶者の有無、子供の人数と年齢によって控除額が変わります。
また、住んでいる場所によって住民税が違います。
ある程度参考となる前提条件が必要なので、下記の通りの条件としました。
- 年齢は40歳(男性)
- サラリーマンとして会社勤めをしている
- 専業主婦の配偶者あり
- 子供は10歳の子が1人
- 住民税は基本の10%(条例での変更を加味しない)
高校生以上の子供がいる場合
今回の検証では年収別の比較をするために40歳で子供が10歳と同条件で比較していますが、収入900万円といえば、サラリーマンとしても役職にあるもう少し高い年齢の方が多いでしょう。
例えば、16歳以上の扶養家族(高校生など)がいれば38万円、19歳~23歳未満(大学生など)がいれば63万円。高校生、大学生の子供が1人ずついれば合計101万円の扶養控除が受けられますので、教育費もかかる一方、手取りも大幅に増えます。
いずれは卒業して社会人になりますので、ずっと扶養控除ができるわけではありませんが、教育費もかからなくなるので、しっかりと計画すれば下記の「結論」より、もう少し高めの家も購入できるはずです。
結論
年収900万円のサラリーマンは(ボーナスの大きさによりますが)、可処分所得は毎月55万円~60万円くらいでしょう。
生活にもゆとりがあり、子供の教育費や車のローンでもかなりの固定費が出ているはずです。
特に、現在貯金ができていない家庭は無理をしないようにローンを組みましょう。
貯金が出来ていないということは、現在、手取り分を全て使い切ってしまっているということです。
これでは、将来繰上げ返済もできませんし、何かあったらすぐにローン破綻してしまいます。
3000万円の住宅ローンを25年(定年までに完済)で返済することは安全レベルで、しっかり貯金すれば繰り上げ返済も十分可能です。
退職金に手をつけることなく、老後の資金に出来そうです。
フラット35のシュミレーションでは月額12.5万円の支払いとなり、収入に対する返済比率は安全なレベルの16.7%です。
マンションの場合は管理費、修繕積立費、駐車場代と結構な固定費用がかかります。
また、この他に固定資産税もかかりますので、お勧めの方法は
頭金500万円を用意し、2500万円の住宅ローンを25年で返済すれば10.4万円となりかなり余裕が出来ます。
この場合、返済比率は11.1%となり、マンションでの固定的な費用が重なっても繰り上げ返済が計画的に実施できるような安心なローンになるのではないでしょうか?
頭金が500万円以上用意できれば、都内なら4300万円くらいの中古マンションがお勧めです。
この年収レベルになると、「新築で少し大きな家」を期待するでしょうが、東京都内からは少し離れた場所なら十分可能です。
中古マンションはお勧めポイントもたくさんあります。
ご興味のある方は、下記の記事も読んでみてください。
所得税額の計算
所得税の計算式は下記の通りになります。
所得税額=(課税総所得額-所得控除)×税率-税額控除
所得税の速算表で税額を計算するために、まず最初に所得控除額(総所得から差引ける金額)を確定してから所得税の計算をします。
所得控除額の計算
所得控除は「課税の対象外として収入から省く」という趣旨のもので、多くの項目があるため、設定した前提条件で分かる範囲のみを対象にします。
参考ですが、次のようなものがあります。
- 基礎控除・・・全員
- 社会保険料控除・・・社会保険料控除健康保険、国民年金、厚生年金
- 小規模企業共済等掛金控除・・・共済や確定拠出年金
- 生命保険料控除・・・生命保険料や介護医療保険料(限度あり)
- 医療費控除・・・医療費(申告により一部)
- 配偶者控除・・・収入が一定以下の配偶者
- 配偶者特別控除・・・配偶者控除の対象から外れた配偶者
- 雑損控除・・・災害や盗難などで資産に損害を受けた(一部)
- 地震保険料控除・・・損害保険で自身などの損害部分の保険料(一部)
- 寄附金控除・・・寄附金(一部)
- 扶養控除・・・扶養親族(年齢により)
- 障害者控除・・・本人や家族が障害者の場合
- 寡婦控除・・・夫と死別したり離婚したりした女性
- 寡夫控除・・・妻と死別したり離婚したりした男性
- 勤労学生控除・・・働く学生
今回、前述した前提条件から対象となる控除は、
- 基礎控除 380,000円
- 配偶者控除 380,000円
- 子供は10歳なので、扶養控除の対象となりません
- 社会保険料は1,286,460円。会社とざっくり折半で643,000円
- 生命保険料控除は最大限の80,000円以上の支払いで、控除額は40,000円
で、控除合計額は1,443,000円となります。
16歳以下の場合は扶養者控除がありません。
その年12月31日現在の年齢が16歳以上の場合、「控除対象扶養親族」となり、控除額が380,000円となります。高校生の子供のイメージです。
また、その年12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満の場合、「特定扶養親族」となり、控除額が630,000円となります。大学生の子供のイメージです。
所得税額の計算
上記の計算から所得控除額は1,443,000円ということが分かりました。
前述したように、所得税額=(課税総所得額-所得控除)×税率-税額控除です。
所得税速算表という便利なものがあるので、それに当てはめて計算します。
所得税速算表
課税総所得額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000 円以上 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
上記の計算式に当てはめて、所得税額を計算しましょう。
所得税額={9,000,000円(課税総所得額)-1,443,000円(所得控除)}×23%(税率)-636,000円(税額控除) なので、
所得税額は1,102,110円となりました。
住民税額の計算
地方税である住民税の計算は、国税である所得税の計算とはまったく違います。
控除の内容、金額も違うので十分注意してください。
住民税は非常にややこしく、条例によって多少の変更が可能なため自治体によって違います。
例えば、東京都だと
- 所得割額:特別区民税6%+都民税4%=10%
- 均等割額:特別区民税3500円+都民税1500円=5000円
となっています。
今回の検証では所得割額(基本の10%のみ)を対象にすることとします。
これに、自治体が条例で決められる「均等額」が加算され、所得税と住民税の控除額の差を調整する「調整控除」が差し引かれます。
今回の検証では「均等額」と「調整控除」を算入していません。
所得割額は前年1月~12月までの所得額をもとに以下の計算式で算出します。 所得割額(住民税額)=(前年の総所得金額-所得控除額)×税率-税額控除額 前提条件として、前年の収入も9,000,000円とします。
所得控除額の計算
- 基礎控除 330,000円
- 配偶者控除 330,000円
- 子供は10歳なので、扶養控除の対象となりません
- 社会保険料は1,286,460円。会社とざっくり折半で643,000円
- 生命保険料控除は最大限の80,000円以上の支払いで、控除額は35,000円
で、控除合計額は1,338,000円となります。
16歳以下の場合は扶養者控除がありません。
前年12月31日現在の年齢が16歳以上の場合、「控除対象扶養親族」となり、控除額が330,000円となります。高校生の子供のイメージです。
また、前年12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満の場合、「特定扶養親族」となり、控除額が450,000円となります。大学生の子供のイメージです。
住民税額の計算
上記の計算から住民税の控除額は1,338,000円ということが分かりました。
前述したように、住民税額=(前年の総所得金額-所得控除額-税額控除額)×税率です。
住民税も計算表があるので、それに当てはめて計算します。
住民税計算表
課税総所得額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
180万円以下 | 10% | 収入金額×40% 650,000円に満たない場合は650,000円 |
180万円を超え360万円以下 | 10% | 収入金額×30%+180,000円 |
330万円を超え660万円以下 | 10% | 収入金額×20%+540,000円 |
660万円を超え1,000万円以下 | 10% | 収入金額×10%+1,200,000円 |
1,000万円超え | 10% | 2,200,000(上限)円 |
上記の計算式に当てはめて、住民税額を計算しましょう。
住民税額={9,000,000円(前年の総所得金額)-1,338,000円(所得控除額})-2,100,000円(税額控除額)}×10%(税率) なので、
住民税額は556,200円となりました。
可処分所得の計算
これまでの計算で、収入金額(9,000,000円)、所得税額(1,102,110円)、住民税額(556,200円)が揃いました。
これで、やっと可処分所得(自由に使えるお金が計算できます。)
計算式は簡単で、下記の通りです。
9,000,000円(収入金額)-1,102,110円(所得税額)-556,200円(住民税額)=7,341,690円です。
月額に直すと、611,808円になります。
実際には「そんなにもらってねーよ!」って人もいると思います。
ボーナスで年間250万円もらえば、毎月の手取りは54万円程度というところでしょうか?
住宅ローンのシュミレーション
ここから最も重要な住宅ローンのシュミレーションです。
借り入れの条件は下記の通りで、シュミレーションは下のサイトで行いました。
- 収入は900万円
- 借り入れは3000万円
- 年齢は40歳(男性
- ほかのローンや借り入れが無い
- 頭金なし
- 金利は1.790%(フラット35で最も多い金利)
- 返済期間は定年の65歳まで(25年)
- ボーナス払い無し
年収900万円の借り入れ限度額
年収900万円の人が25年、金利1.790%で借り入れられる限度額はいくらでしょうか?Br>
シュミレーション結果は下記の通りです。
シュミレーションの結果、5640万円が借り入れ可能となりました。
それでは、この6345万円を25年間で返済すると毎月の返済額はいくらになるでしょうか?
シュミレーション結果は下記の通りです。
毎月の返済額は26.3万円。返済総額は7875万円となりました。
55万円~60万円という手取りの額から考えても、この上に固定資産税、マンションの場合には管理費、修繕積立費、駐車場代が重なると結構厳しい数字です。
やはり、借入限度額まで借りるというのはかなりのリスクがあります。
「借り入れ可能額」=「返済できる住宅ローン」ではないということを理解していただけたと思います。
恐ろしい!
3000万円を借り入れた場合
それでは、前述したシュミレーション通りの3000万円を借り入れた場合はどうでしょう?
シュミレーション結果は下記の通りです。
いかがでしょうか?
シュミレーションによれば、毎月の返済額は12.5万円。
計算した可処分所得611,808円で計算すると約20.4%です。
マンションでは管理費や修繕積立費、駐車場代などがかかりますが、「借りすぎだ」という感じでもなく安全度レベルの数字です。
他のローンを借り入れてなければ問題ないでしょう。
税込みの収入に対する返済金額の比率を「返済比率」と言いますが、「25%を超えるとローン破綻の可能性が高まると考えられています。
返済比率は安全なレベルの16.7%です。
ちなみにですが、ローン破綻しないギリギリの返済比率25%での返済額は約22.5万円で、借入金額は5438万円となります。
アドバイス
東京カンテイという会社が調査し2018年1月31日に発表した結果では、東京の中古マンションの平均価格は3257万円、新築マンションでは5544万円と超バブル状態。
低金利ですからお金がジャブジャブ状態。融資先、投資先を金融機関が探しているのでお金を借りること自体は簡単になっています。
だからこそ、将来の金利の上昇や賃金の推移も予想しながら、長期の住宅ローンを組み立てましょう。
1、「頭金」は必ず用意しよう
「頭金なしでも購入可能!」などと魅力的な広告もありますが、よく考えて見ましょう!
現在、頭金を用意い出来ていない人は、収入を全部使ってしまっていて「貯金」出来ていない人です。
将来の金利上昇や収入減少などを考えても「貯金ができる家計」はとても重要です。
また、貯金がしっかり出来れば、繰上返済も可能です。老後も安定するのでとてもお勧めです。
2、完済日は退職前にしよう
「退職金で完済できる」「皆さんそうしている」などの営業トークに騙されてはいけません。
退職金を使ってしまったら、老後はどうするんでしょうか?
バリアフリーや老朽化のリフォームだってお金が掛かります。
「退職金は使わない」という返済計画を組みましょう。
3、「所有する」ための経費を頭に入れよう
よく、「同じ金額だったら、資産になるように買ってしまったほうが得」などど言いますが本当でしょうか?
家を購入すれば、固定資産税がかかります。
マンションであれば、管理費、修繕積立費、駐車場代もかかります。
毎月の返済金額+(最低)3万円~5万円くらいは経費がかかると思ってローンを組みましょう。
4、将来のリスクは既に抱えていることを再度理解しよう
「収入が将来上がるはず・・・」なんて思っていると、せっかくの資産を全て失うことになってしまいます。
住宅ローンは非常に長い期間の返済が必要です。
今から25年前なんて、携帯電話も車の安全装置もメガバンクもまったく違う状況でした。
通販のアマゾンなんて聞いたことがありませんでした。
そう考えると、勤め先も政治も経済も「何も変わらない」なんてありえません。
しっかり繰り上げ返済できるように毎月貯金をしておきましょう。
何もなくても、ご自身やご家族の病気、自然の大災害などのリスクは既に抱えていることをもう一度理解しておきましょう。