競売と任意売却
住宅ローンの支払いが滞った場合、よく耳にする言葉に競売と任意売却があります。
競売はともかく、「任意売却」と聞くと、その言葉から 「任意に売却する」と想像してしまいますが、実態は全く違います。
裁判所の許可による「強制執行」に対して「任意」といいますが、債権者(住宅ローンを組んだ金融機関など)の合意が必要です。
当サイトでは「より良い住環境を求めマンションを売却する方」にご案内しているので、サイト全体の内容とは少し離れた内容ですが、任意売却万が一のために知っておくべき制度で非常にメリットが大きい一方、トラブルも多いので強制競売との違いも含めしっかりとご説明いたします。
このページの目次
任意売却を早急に検討するケース
任意売却ができるのは、住宅ローンを滞納した(滞納することが明らか)場合にのみ、債権者(借入先の金融機関)の合意を得て売却する方法です。
任意売却を早急に検討するケースは下記のような場合です。
- ローンの支払いが既に滞納/延滞を起こしている
- 将来の住宅ローンが返済できないことが明らか
- 将来のボーナス払いが返済できないことが明らか
- 裁判所から差押通知が届いた
一般的に住宅ローンの滞納が3~6ヶ月(その間にも督促状や代位弁済通知、競売開始決定通知書などが来ますが)で競売に向けて手続きが開始されます。
ローンを返済できないことが明らかになった段階(滞納をする前)で任意売却の意思があることを伝えれば、任意売却の成功率が格段に上がると思います。この場合、信用情報機関の事故扱いとならない上、早期に生活再建する事も可能になります。
また、任意売却はあくまで「交渉ごと」です。任意売却が法律的に可能なのは競売開札日の2日前までですが、競売が開始されてしまうと債権者と交渉する時間が少なくなり、任意売却の成功確率は落ちてしまいます。任意売却を成功させるためには、少しでも早く交渉を開始できる環境を整えましょう。
競売と任意売却の違い
「競売」は裁判所による強制執行、「任意売却」は債権者との交渉ごとですから、違いがあるのは当然です。あくまで債権者の同意に基づくものなので、下記の違いは「可能性」としか言いようがありませんが、可能性があるだけマシです。
ここで問題になるのはまた、債権者(金融機関)と債務者(ローン滞納者)の信頼関係と人間関係です。
良い条件を付けてもらうためには、まず第一報。実際に滞納してしまう前に「任意売却の意思がある」と金融機関へ連絡を入れましょう。
項目 | 競売 | 任意売却 |
---|---|---|
売却価格 | 市場価格の5-7割前後の場合が多い | 市場価格に近い価格で売却できる場合が多い |
プライバシー | 情報が公開されるため近所や職場に知られる可能性が高い | 通常の不動産売却と同じように、事情を知られずに売却可能 |
持出し金 | 引越費用など | 一切なし |
売却後の残債の返済 | 一括での返済を求められる | 無理ない範囲で分割返済が可能 |
残債務の交渉 | 出来ない | できる |
引越費用 | 一切出ない | 債権者との交渉次第で、最高30万円の引越費用を捻出できる |
引越し日 | 所有権移転後は不法占拠になり、引越し日は自由に選べない | 購入者、債権者との協議を行い、引越し日を設定できる |
自らの意思 | 競売は所有者の意志は全く関係ない | 債権者との事前協議によるが、ご自身の意志で売却活動ができる |
任意売却の流れ
全体の流れについては下記の「任意売却の流れ」を参照ください。
あれ?と思った方はよく勉強していらっしゃいます。
任意売却の流れは通常の不動産売却とあまり変わりません。しかも、不動産業者が交渉に当たってくれます。
ここでとても重要なポイントは、 「任意売却のノウハウを持っている不動産業者」を選ぶことです。金融機関との交渉経験、関連法規の熟知などとても専門的で難しい内容です。
場合によっては、「一度開始した競売手続きを取り下げさせる」というような強烈な交渉をすることもあります。業者選びは「任意売却」最大のイベントと言えます。
事前相談のポイント
ローンの滞納または競売手続きが目前に迫っている債務者にとって、任意売却へ向けた不動産業者との事前相談はとても重要です。
とにかく時間がないので、正確な情報を不動産業者に伝えられなければ、金融機関との交渉する材料が無くなってしまうからです。
ここでは事前相談の基本的なポイントを抑えましょう。もちろん、個別の事情によりもっと多くの情報が必要な場合もありますので、無駄な時間を排除するためにも事前相談には伝えたい情報をまとめた上で行きましょう。
項目名 | 内容 |
---|---|
1、抵当権等を登記設定している債権者は何社あるのか | 通常の不動産売却と同様、完全な所有権の移転のために抵当権などの登記は抹消しなければなりません |
2、住宅ローンの滞納状況、または差押えの状況 | 任意売却は、住宅ローンの滞納もしくは滞納するのが明らかな状況でなければできません。(どうにかやりくり出来ていると任意売却はできません。)任意売には各債権者の了承が必要で、現在の滞納状況などは細かく伝える必要があります。 |
3、消費者金融や、自動車ローン、カードローン等の債務の状況 | 抵当権が設定されて債務状況もしっかり伝えましょう。無担保の債権者は、住宅ローンの債権者よりも借入金の取り立てが厳しい場合があります。 |
4、税金の滞納や差押えの状況。 | 固定資産税・都市計画税・住民税などの税金関係についての確認も必要です。不動産などの資産への税金は、督促状を発した日から遺産して10日が経過するまでに完納しないと差し押さえることが可能とされています |
5、物件の状況 | 対象となる不動産の概要、占有者または賃貸していればその状況。 |
6、管理費・修繕積立金等の滞納はあるか(マンションの場合) | 管理費や修繕積立金の滞納があった場合、買主にその費用が引き継がれることになります。通常、そういった不動産が売却できないため状況は伝えましょう。 |
任意売却ができないケース
何度もしつこいですが、任意売却は交渉ごとです。利害関係者すべてが非常に短い時間で協力しないと成功しません。
ローンを組んでいる金融機関だけでなく、連帯保証人などにも多大な迷惑が必ずかかります。
ここでは任意売却ができないケースをいくつかご紹介します。
- 競売の手続きが進んで、時間的に不可能な場合
- 連帯債務者・連帯保証人と連絡がとれない、売却の承諾が得られない場合
- 依頼主があまりにも非協力的な場合
- 内覧・内見希望者が出ても、部屋の中を見せてもらうことが出来ない場合
- 税金の滞納額、マンションの管理費等滞納額が債権者の許容範囲を超えている場合
- 本人もしくは保証人の本人確認ができない。何らかの理由で自分の意思表示ができない場合
- 債権者との関係を悪くしてしまっている場合
- 債権者が競売以外認めない場合。又、後順位抵当権者が応じない場合
- 連帯保証人に絶対に迷惑をかけられない場合
- 再建築不可の条件下にある不動産の場合
- 依頼主が途中で消息不明になってしまう場合
任意売却にかかる費用
今までの記事を読んで、任意売却は想像したよりもとても複雑で大変な作業だと思ったのではないでしょうか?
これだけの手順や作業に対して債務者はどれだけの費用がかかるのでしょうか?
また、債務者の状況を聞きだし、債権者との交渉を行い、利害関係者の調整を行う仲介業者はどれほどの報酬が得られるのでしょうか?
基本的には下記のとおりです。(状況によって変わります)
- 不動産売却の仲介手数料(売買価格の3%+6万円+消費税)
- 抵当権の抹消費用と司法書士の報酬
- 固定資産税等の滞納精算金
- 本人の引越費用
- 残置物の撤去費用
- 差押等がある場合、その解除費用
- マンションの滞納管理費など
基本的には債務者の持ち出し費用がかからないよう、売却した金額から各関係者と調整して費用を捻出することになります。
くれぐれもコンサルタント免許も無い悪徳業者に「コンサルタント代」だの「○○代」だのと騙し取られないように気をつけてください。
この手の困っている人に対して「人の足元を見る」ようなトラブルは非常に多いようです。業者の選定は慎重にしましょう。
任意売却後の残債務は?
任意売却すると自己破産のように残債務がなくなると思っている方も多いようですが、実際にはそんなわけがありません。
しかし、任意売却は交渉ごとです。任意売却後の債務者の生活が立て直せるように、仲介業者が月々の返済額を最小限度に抑えられるよう交渉してくれる場合がほとんどです
任意売却のまとめ
いかがでしたでしょうか?かなり長いご説明になりましたが、実際はまだまだ書ききれないほど深い話なのです。
簡単にこのページのポイントをまとめると
- 1、ローンの支払いができないことが明らかになったらすぐに行動しましょう。
- 2、利害関係者の協力あっての任意売却です。人間関係を大切にしましょう。
- 3、任意売却に強い仲介業者と契約しましょう
- 4、甘い話はありません。悪徳業者とのトラブルが無いように慎重に。