媒介契約を結ぼう

訪問査定の結果、査定価格と不動産業者、担当者を比較検討して媒介契約を結びます。「媒介」は一般的に「仲介」と言われているものですが、言葉の定義は気にする必要はありません。法律用語だと思っていただいても結構です。

媒介契約は3種類あるのですが、どれを選ぶかは依頼主が決めなければなりません。ここはしっかりと勉強しておきましょう。

媒介契約は3種類

一般媒介契約は下記の3種類があります。売主、不動産業者ともに上から制限が厳しい順番になっています。

  • 専属選任媒介契約
  • 選任媒介契約
  • 一般媒介契約

制限される内容は次の5点になります。

制限内容 契約種類による制限の違い
1、複数の業者との媒介契約は? 専属選任媒介契約・・・1社のみ
選任媒介契約・・・1社のみ
一般媒介契約・・・複数契約OK。但し明示か非明示かの選択となる。
2、自分で見つけた買主との売買契約 専属選任媒介契約・・・基本的にできない。
選任媒介契約・・・基本的にできる。契約履行分の費用負担あり。
一般媒介契約・・・できる。
3、契約期間 専属選任媒介契約・・・3ヶ月
選任媒介契約・・・3ヶ月
一般媒介契約・・・行政指導により3ヶ月が多い
4、指定流通機構(レインズ)への登録義務 専属選任媒介契約・・・媒介契約後5日以内に登録
選任媒介契約・・・媒介契約後7日以内に登録
一般媒介契約・・・登録義務なし
5、販売状況報告の義務 専属選任媒介契約・・・7日に1回以上
選任媒介契約・・・14日に1回以上
一般媒介契約・・・規定なし

 

指定流通機構(レインズ)とは?

駅前の不動産業者の窓にはたくさんの物件情報が貼ってあって、近くの不動産業者にも同じような張り紙があります。
小さい不動産業者でも歴史と実績があって、媒介契約を締結すると他の不動産業者には分からない・・・。

「結局大手の業者の方が販売ネットワークがあって安心」などと思っていませんか?
不動産の供給過剰で、社会資本としての中古物件の流通を活性化させようとしている現代。さすがに行政も考えます。

レインズ(Real Estate Information Network System=REINS)は、宅地建物取引業法に基づいて国土交通大臣が指定した不動産流通機構の運営する不動産情報交換のためのネットワークシステムです
(専属)選任媒介契約を締結すると、売主の物件情報を指定期間内にレインズへ登録する法的義務を不動産業者が負うこととなり、登録された情報を全国の業者が検索し、購入申し込みをすることができます。

従って皆様の売却情報は、(専属)選任媒介契約を締結した段階で、数日後には日本中の不動産業者が買主のために検索する対象となるのです。

重要ポイント!
特に平成28年1月4日以降、レインズに登録されると、売主にはID・パスワードが交付され、登録内容や取引状況を直接確認できる機能を追加しています。
取引状況の項目には、「公開中」「書面による購入申し込みあり」「売り手都合で一時紹介停止中」の3種類で状態が表されています。
これによって、不動産業者が自分で「売却」と「購入」を両方媒介して二重の仲介手数料を得ようとするために(両手仲介といいます)物件情報を不正に操作することを防いでいます。

各媒介契約に向いている売主

結局、どの契約にすればいいんだ?と悩んでしまいますよね。基本的に『マンション売却の案内人』では選任媒介契約をお勧めします。理由は下記のとおりです。

  • 複数の業者と契約すると何かあるごとに調整が面倒
  • レインズへ登録される
  • 不動産業者の報告義務は14日に1度であるが、7日に一度電話すれば良い

それでは、どういう人が各契約に向いているのか簡単にご説明します。

契約種類 向いている売主
1、専属選任媒介契約 1社との契約ですから、信頼できる業者と担当者に出会えればお任せしたいですよね。不動産会社にとっては必ず仲介手数料の確保ができますので、不動産会社の積極的な売却活動が期待できます。一方、制限の厳しさから担当者の時間と手間がかかるので、不動産業者が既に買主の目処がついているか、ある程度高額な物件に向いていると思います。
2、選任媒介契約 やはり1社との契約ですから、信頼できる業者と担当者に出会えればお任せしたいですよね。自分で買主を発見する可能性のない売主は、通常この契約を結ぶのではないでしょうか?
3、一般媒介契約 複数社契約ですから、売主にも相当の負担がかかることは覚悟しましょう。競争原理ははたらきますが、黙っていても(経費と時間をかけずに)売れる物件。人気エリアにあって、相場よりも値段が安いとか、売却物件がほとんど出ず、売却情報待ちの買主が多いなど、他社と競争してまで売りたいと思わせるような条件があればお勧めします。

 

各媒介契約のメリット・デメリットについて

多くのサイトで各媒介契約のメリットとデメリットが細かく書かれています。
あくまで個人的な意見ですが、まったく意味がありません。

なぜかというと、メリットとデメリットがオモテ⇔ウラの関係になってしまうからです。
 
たとえば、(専属)選任媒介契約メリットは「1社に任せることになるので、積極的な営業が期待できる」となりますが、デメリットは「1社の契約となるので競争原理がはたらかず、営業が消極的になる可能性がある」になります。
 
一方、一般媒介契約のメリットは「複数の会社と媒介契約ができるので、競争原理がはたらく」ですが、デメリットは「自社で売却できるとは限らないので、積極的な販売活動をしない可能性もある」となります。
いずれもメリットがデメリットと同じ切り口で発生してしまいます。

あえて言えば、一般媒介契約だけはレインズに登録されないので「情報が公にならない」というメリットがあります。しかし、レインズは不動産業者しかアクセスできないネットワークシステムです。それより、信頼できる不動産業者の担当者に「周囲には知られたくない。」と率直に伝えたほうが何かしらの対策を考えてくれるのではないでしょうか?

結局、信頼してお任せできる不動産業者と担当者を見つけられたかどうかがポイントです。(そもそも、信頼できない業者と契約することもあり得ませんが・・・。)

皆様は既に本サイトの手順をしっかり作業することで、信頼して任せられる業者と担当者を発見するための「事前準備」「書類の作成」「多くの業者との面談」「情報の比較検討」を徹底しているわけです。
従って、「多くの時間と手間をかけてでも高値で売却する」という覚悟があれば一般媒介契約をお勧めしますし、「プロにある程度任せて、徹底的に管理する」と思えば、選任媒介契約を選択するべきだと思います。

媒介契約書のチェックポイント

媒介契約書は必ず紙面で締結する必要があります。 契約書を交わすことで、売主と不動産業者が負う義務を明確化したり、不動産会社が行う仲介業務の対価(仲介手数料)などを明確化し、トラブルの発生を防ぎます。
内容が難しいわけではありませんが、初めて見る人にとっては良いのか悪いのか分かりません。

契約書については、消費者保護を目的として国土交通省から「標準媒介契約約款」が告示されています。

下記のチェックポイントにもあるように、この標準媒介契約約款を使用しているか否かについて契約書に明記しなければならない(国土交通省からの指導)ので、約款の内容や確認事項を事前に理解しておきましょう。  → 標準媒介契約約款-国土交通省

チェックポイント 内容
1、物件の特定 所在、地番、種類、構造などが正確に特定されているか
2、売買すべき価額または評価額 売出価格が正確に記載されているか
3、媒介契約の種類 専属選任媒介契約、選任媒介契約、一般媒介契約の種別が間違いないか
4、有効期間と解除に関する事項 有効期間が3ヶ月を超えない期間になっているか。売主、業者とも不正や不誠実な行為によって解除できる内容、ペナルティーについても確認しましょう。
5、指定流通機構への登録 専属選任媒介契約、選任媒介契約であれば登録が規定通りに行われる内容になっているか確認しましょう
6、報酬に関する事項 報酬の上限以内に収まっているか?仲介手数料の支払い時期はいつかを確認しましょう。(売買契約書交付時に50%、残代金決済時に50%が多い)
7、違反に対する措置 契約違反に対する措置およびペナルティーを確認しましょう。
8、標準約款か否かの区別 国土交通省が作成した「標準媒介契約約款」であるか否かを明記してあるか

近年では上記に加え、国土交通省の指導により「反社会勢力の排除」項目が追加されていることも多いです。

モデル約款はこちら→ 反社会勢力の排除モデル条項例-国土交通省
 

媒介(仲介)手数料について

媒介手数料はどのような段階で発生するのでしょうか?

そもそも、媒介手数料は宅地建物取引業者(不動産業者)の媒介により、売買・交換・貸借が成立した場合に、宅地建物取引業者が媒介契約に基づき、依頼者から受け取ることができる報酬のことです。
 
実際の支払い時期は契約内容によって変わりますが、売買契約締結時に50%、引渡し・決済時に50%という場合が多いです。
 

媒介手数料の計算方法

この報酬の額は、媒介契約または代理契約に基づき、依頼者と宅地建物取引業者の間で決められます。

手数料の上限は、宅地建物取引業法により国土交通大臣が告示で定められており、宅地建物取引業者は「その告示の規定を超えて、報酬を受けてはならない」という制限があります。
契約の種類によって手数料が変わることもありません。

よく目にする媒介手数料の金額は法律で決められた報酬額の上限なのです。
報酬額は売買する物件の金額により下記のようになっています。(簡易的な計算方法で記載します)

売買金額 手数料の上限
売買価格(税込)が200万円以下 売買価格×5%×消費税(8%)
売買価格(税込)が200万円を超え〜400万円までの場合 (売買価格×4%+2万円)×消費税(8%)
売買価格(税込)が400万円を超える場合 (売買価格×3%+6万円)×消費税(8%)

(注)売買金額には消費税は含みません。
 

媒介手数料は値下げできる?

「よく目にする手数料の金額は報酬の上限」と聞くと、皆様同じ疑問が沸くはずです。
交渉で値下げできるのでは・・・・と。
実際、手数料の割引をうたっている業者は結構あります。しかし現実は非常に難しいと思います。
やはり、仲介業者の法律上の責任は非常に重く、特に権利関係の確認は何度も行わなけれなりません。また、売却後に責任を追及されることも多くあります。

広告の必要が無いなど、明らかに何もしなくても売却できるという自信があればやってみてはいかがでしょう。

一方、「報酬の上限」の中で行わなければならないことまで別名目で請求してくる悪徳業者もいます。
売買する物件の査定費用、その実費、通常の広告がそれに当たります。
 
「怪しいと思ったら早急に都道府県に問い合わせましょう。不動産業者の免許とは別の県でも大丈夫です。問題があれば実際に受け取らなくても請求しただけで行政処分が下されます。
 
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